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三話 幼蝶は嫌々手を組む2

 

 ――それぞれでやって、後で合わせればいいだろ。

 協力する気など毛頭なさそうなファルの提案を、レンも「いがみ合いながらやるよりはマシか」と承諾した。
 本番である成果発表会は約一ヶ月後。とりあえず一週間後にそれぞれの途中経過を見せるということで、別行動となった。
 レンは真っ白の紙を前に、くるくるとペンを回しながら、どんな魔導具にしようかと思案する。
 魔導具とは、魔法を発動させるための魔法陣と、魔石と呼ばれる核となる石を使った魔法の発生装置のことだ。つまりは、魔法の研究者である両親の元に生まれ育ったレンにとってはかなり身近なもので、得意分野であると自負している。

「お前、もしかして一人でやってんの?」

 うんうんと唸っていた時に話しかけてきたのはルークだった。その後ろには彼のペアとなったクラスメイトのニクスがいる。眼鏡をかけている上に前髪も長いせいか表情がよく見えず、少々陰気な雰囲気の少年だ。しかし、先程ルークと打ち合わせしている姿を横目で見た限り、見た目の雰囲気とはまた違う、よく笑う人物のようだった。

「お前らもう打ち合わせ終わったの?」
「いや? アイデア出しが頭打ちしてきたから、気分転換しようって言ってたとこ」

 ルークが「な?」と言いながら振り返ると、ニクスもこくりと頷いた。

「そんで、お前のペアは?」
「…………俺らは個人主義なの」

 ペアの決まった大方のクラスメイトは、それぞれの相手と共になにがしかの話し合いをしている。早々に解散したのはレンたちくらいだろう。

個人主義、ってお前らな……」
「いいんだよ! 絶対すごい魔導具作って、あいつをあっと言わせてやるんだ!!」

 呆れるルークを尻目に、レンは闘志を燃やす。
 そうと決まればと、レンは再びまだ真っ白の紙に向き直った。

「あっと言わせてやるには、演出もこだわらないと……」

 ぶつぶつ呟きながら書き込みをはじめると、後ろではルークがやれやれという様子で溜息をついた。

「まあ、ほどほどにしとけよ……」

 そう言いながらレンの肩をぽんと叩くと、彼はニクスを伴ってその場を後にした。

 

 

***

 

 

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