四話 幼蝶はひらりと飛んでゆく2
「だーかーらー! ほら、こう、光がバババーってなったら、カッコいいだろ!?」
「カッコよさで何か変わるのか?」
「変わるだろ! ほら……、その、……カッコいい!!」
「……」
呆れ果てたような視線を向けてくるファルに、レンはぐっと押し黙った。
件の爆発事故の数日後。
一足早く回復したレンに遅れ、ファルもようやく保健医から日常生活に戻って良いとお達しが下った。
元々身体が弱いのか、それとも怪我が治りにくいのか、理由はよく分からないが、回復が遅れているのをレンも気になっていたため、顔が見れてほっとした。
なにはともあれ、二人ともが学園生活に復帰できた。
それならば早速、と魔導具制作の話を――と場を設けたまでは良かったのだが、その後の会話は全くの平行線を辿っている。
光の芸術で派手な見世物をしたいレンと、見た目などどうでもいいから実用性を重視するファルと、で全く話が噛み合わなかった。
「――あれ、お前ら『個人主義』なんじゃなかったのか?」
ぐぬぬと押し黙っていたレンに、からかうような調子で話しかけてきたのはルークだ。
あの爆発事故は当然噂になっていたし、それが理由で「個人主義」をやめたのだというのを察せないほどこの男は馬鹿ではない。
つまり分かっていて聞いてるのだ。レンはますます、ぶすくれた顔をして彼の方を見た。
「うるさい、わかってるくせに」
「はは、そう怒るなよ。あんたも災難だったな」
ファルの方へ向けられた労りの声に、話しかけられると思っていなかったのか目を瞬かせたファルは、首を横に振った。
「別に、もう終わったことだから」
「ほー。怒ってねぇんだ?」
「怒っても仕方なくないか?」
和やかに会話を続ける二人を――というよりファルを見て、レンは頬を膨らませた。
「……俺には冷たいのに」
ぼそりと呟くと、二人が一斉にレンを見た。
「――ぶっ、スネてる」
「すねてないし!」
笑いだしたルークに抗議の意をこめて、ぶんぶんと拳を振る。ぎゃいぎゃいと騒いでいたが、ふとファルが黙り込んでいることに気付く。
「ファル……? あの、ほんとにそういうつもりじゃ……」
「……お前に冷たくあたってるのは事実だ」
「あらためて言われるとキズつくんだけど……?」
大袈裟に胸を抑えておちゃらけてみせるが、彼の真面目な表情は変わらない。
そんなファルを見ていると次第に笑顔を浮かべ続けるのも難しくなる。
「…………あのさ、そんなに俺のこと嫌い?」
沈黙に耐えかね、気が付くとレンはそう訊ねていた。しばらく待ってみるがファルからの返答はない。
だがそれはきっと、答えるまでもないということなのだ。
「――ッ」
レンはガタッと大きな音をさせて立ち上がった。
「……っ、今日はここまでにしよう。ファルも疲れてるだろうし。それじゃ俺、ちょっと出てくる」
何でもない風を装って、ファルに背を向ける。
「あ、おい……、レン!」
呼び止めたのはルーク。ファルは最後まで口を開かなかった。
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