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八話 幼蝶は終わりを見る1

 

「よぉし、完成!」

 レンは魔導具についている最後のネジを締めて、うーんと伸びをした。

「いやー、結構いい感じじゃねえかな?」

 ぱっと後ろを向くと、自分の担当箇所が終わり、先に片付けをはじめていたファルが手を止める。

「ああ、想像以上に」

 ファルはこちらへ歩み寄ってくると、完成した魔導具を手に取り、細部を点検する。

「うん、完璧」
「いよっし」

 ファルのお墨付きに、レンはガッツポーズをした。

「それにしても、意外だった。レンがこんなに手先が器用だったなんて」
「あー……、よく言われる」

 ファルはランプのような形をした魔導具の周囲に施された意匠を指差して言う。
 魔導具の性能自体には関係のない場所だが、繊細な幾何学模様のようなそれは、ただそこに置いてあるだけでも美しい。また、その中心部に据えられた、要となる魔石を留める台にも細かな彫りが施されていた。

「それでいうと、ファルこそあんな不器用だったなんて……」
「うるさい」
「はは、ごめ…あ、ちょ、いたっ」

 レンが揶揄うように笑うと、照れ隠しかファルが頭をはたいてくる。
 というのも、最終的にはファルの掻いた魔法陣を採用したため、それを金属板に彫るのは本人が、と思っていた――のだが、その出来はというと、とても……とても、実用に耐えられるものではなかったのだ。
 紙に書かれている時点の複雑ながら調和してたそれを見て、レンはてっきり、彼はそういったものが得意なのだと思っていたのだった

「魔法陣を組むのと、綺麗に彫るのは違うからな?」
「もー、ごめんって」

 睨んでくるファルに、レンはからかうのを止めて降参と両手を上げた。

「――――けどもう、明日かー」

 レンは長かったような短かったような制作課題の期間を思い返す。
 魔導具のお披露目当日となる成果発表会は、いよいよ明日に迫っている。課題物の提出期限は今日の夕刻。そろそろ出しに行かなければならない。

「いい結果になると良いよな!」

 レンがにぱっと笑うと、ファルは口元を緩めて肩を竦める。

「……そうだな。けど、提出しなきゃ意味ないからな?」
「わ、わかってるよ! とっとと片付けて出しに行こうぜ!」

 立ち上がったレンは魔導具を安全な端の方に移動させると、ファルと共に道具類の片付けに走る。
 そしてバタバタとそれらを済ませて、魔導具を抱え込むと、廊下に出た。

「「あ」」

 そこで出くわしたのはルークとニクスの二人。
 レンはお互いギリギリだな、とルークと笑いあうと、四人で提出先である教師の元へと急いだのだった。

 

 

***

 

 

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