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2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

四話 幼蝶はひらりと飛んでゆく1

「ごめん!!」 レンは医務室のベッドの上で、ファルに頭を下げていた。 正座に頭はシーツをこすり平身低頭――、要するに土下座である。 頬に湿布、頭に包帯、身体の所々にも傷を作ったファルは、そんなレンに大きな溜息をついた。 「もういい。事故だろ」 レ…

三話 幼蝶は嫌々手を組む4

レンがファイルから取り出した紙は三枚。 その全てを重ねて床に置いた。 「三枚も使うのか……?」 ファルが不思議そうにするのも無理はない。一つの魔法には一つの魔法陣。それが一般的な考えだ。 しかし魔法の専門家を両親に持つレンは、それが必ずしも最適…

三話 幼蝶は嫌々手を組む3

互いに何をしているのかも分からないまま、一週間。 制作した魔導具に組み込む魔法陣をそれぞれ持参し、使用許可をとった演習場に集まっていた。 演習場というのは、主に魔法を練習するための場所だ。中で不測の事態が起こっても外部に被害が出ないようにす…

三話 幼蝶は嫌々手を組む2

――それぞれでやって、後で合わせればいいだろ。 協力する気など毛頭なさそうなファルの提案を、レンも「いがみ合いながらやるよりはマシか」と承諾した。 本番である成果発表会は約一ヶ月後。とりあえず一週間後にそれぞれの途中経過を見せるということで、…

三話 幼蝶は嫌々手を組む1

「――春の課題制作は、ペアでの魔導具制作とします」 もやもやを抱えたまま次の日を迎えたレンは、明くる日の朝一番の授業で、教師のそんな言葉に目を瞬かせた。 アカデミーでは春と秋に一回ずつ、外部の人間を招いての成果発表会がある。 上級課程まで進んだ…