八話 幼蝶は終わりを見る2
「それじゃあ、お互いの課題完成を祝して――」
「「「「かんぱーい」」」」
レンとファル、それからルークとニクスの四人は、課題を提出した後、打ち上げと称して寮の食堂の一角でジュースの入ったグラスをそれぞれ傾けた。
「いやあ、お前らのところ一時はどうなるか、って心配してたんだぞ?」
四人の前に並べられた夕食の皿の一つにルークがフォークを突き刺しながら言った。
「いやいや! 結構いい感じだっただろ!?」
レンは揚げ物を取皿に移しながら眉を上げるが、ルークは呆れ顔だ。
「途中からは、な。爆発事故を起こしたの忘れたのか?」
「あー……、あれは、そのぉ……、な?」
ファルに助けを求めて、横にいる彼をちらりと見るが肩を竦められる。
「あれがあったからこそ……、とも言えるな。――まあ、僕は危うく死にかけたわけだけど」
なんともわざとらしく溜息をつかれて、レンは言葉に詰まる。
「ぐっ。……それは、今でも反省してます!!」
からかわれてる。
さっきの魔法陣の彫りに関する仕返しのようだ。
だが今は二人きりではない。当然、ルークがその話に乗っかってきた。
「――と言ってますが? ファルさん?」
「まああの後から、魔法陣のスペルチェックはやたら執心するようになったな」
「え、まさか爆発の原因って――」
「そう。まさかのスペルミス」
「ちょお、もういいだろぉ!?」
過去の失敗を掘り返されて涙目のレンは、どうにか二人を止めようとするが、ファルとルークは徹底的にレンをからかうと決めたようだった。
にやにやしているルークの質問にファルは淡々と答えていく――ように見えるが、ファルの声にも笑いが混じっていた。
そうして、場は笑いに包まれたまま夜が更けていく――。
「――ちょっと手洗いに行ってくるよ」
そう言ってニクスが席を立ったのは、夕食をあらかた食べ終えて、ジュースをちびちび飲みながら取り留めもない話をしている時だった。
「……ファル?」
暗い廊下へと消えていくニクスの背中をファルが見つめていたあ。
「――……、僕も行ってくる」
「え、あ……」
レンが呼び止める間もなく、ファルはニクスの後を追うように行ってしまう。
「? どうかしたか、レン?」
「…………いや……」
首を横に振ってみるが、どうしてもファルの消えた先を見てしまう。
ファルの表情が、すごく――思い詰めたもののように見えたからだ。
レンは膝の上できゅっと拳を握り、きっと気のせいだと自分に言い聞かせた。
***
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