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BL小説-未羽化(研究者×蝶の民)-未羽化_挿話2

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて9

「……ルフィアちゃん?」 目を見開いたまま固まってしまったルフィアの名前を呼ぶ。 すると彼女は、そのまま瞬きを一つして――つっと一筋涙を零した。 「っ!?」 それを見て焦らされたのはルークの方だった。慌てて彼女の方へ足を踏み出せば、ルフィアは逃げ…

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて8

代わり映えのしない毎日は、飛ぶように過ぎていく。 義兄のニクスは、初めての詩集出版ということで、執筆はもちろん、装丁から紙の材質までこだわり抜き、忙しそうにしていた。ほんの少し前に、ようやく刊行までの作業が終了し、お祝いをしたところだ。 ル…

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて7

「……今日も来ない」 ルフィアは花屋のカウンターに肘をついて、入り口を見つめていた。 あの「デート」の日から、ぱったりと彼が姿を見せることが無くなってしまったのだ。 「……いやいや、別に待ってないから」 あの日選んだ土産がどうなったのか気になるだ…

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて6

「今日はありがとうね」 すっかり空が赤く染まった頃、すっかりくたびれた様子のルフィアに、ルークは苦笑いしながらそう言った。 「……いえ」 カフェでの休憩後、また様々な店を回り、最終的にルークが選んだのは表面をキャラメリゼしたデニッシュ――ルフィア…

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて5

「それで、どうしてわたしが、あなたと出かけなければならないんですか!?」「とかなんとか言いながら来てくれるルフィアちゃん、やさし~」「怒りますよ!!」 今日はルフィアの休日。 それを嗅ぎつけたルークは、彼女を誘い町中へと繰り出していた。 いま…

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて4

「……で、あっさり振られたんですか」「そー。なぐさめて、ルフィアちゃん」 そんな事を言いながらルークが上目遣いでルフィアを見上げると、彼女は胡乱な目つきでこちらを見下ろしていた。 「やだ、傷付く……」「……はいはい」 肩を竦めたルフィアは、ブーケ作…

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて3

ルークは町の商店街へと足を運んでいた。 いくつか店を覗きながら、画家の噂を訪ねて歩く。だが、今ひとつ有力な話に行き当たらない。 海を描く画家、という存在は知っている人が多かったが、どこに住んでいるかという知りたい情報には辿り着けない。 どうす…

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて2

オドラー商会は芸術家の作品も取り扱っている。 ルークは父について様々な勉強をしていた頃に見た、まだ無名の――けれど心に残る作品と出会っていたのを思い出したのだ。 その芸術家は世に殆ど出ていない。 その作品集をいち早く手に、可能ならば独占販売権を…

先に巣立った彼は咲わない娘に魅せられて1

「ルーク、お前に一つ課題を与える」 静かな部屋に、厳かな男の声が落ちた。 ついに来たかとルークはごくりと唾を飲み込んで、男――父の言葉を待つ。 「後継者指名の最終試験だ。この商会における、次の売れ筋商品を見つけてきなさい」「はい」 ルーク――蝶の…