七話 幼蝶は希望を掬い上げ2
「いつの間にそんな仲良くなったんだ?」
ルークはよいしょ、と言いながらレンたちの傍に膝をついた。
「あー……、まあ、色々あって?」
な、とレンがファルの方を向くと、ファルも若干気まずげな顔をしてこくりと頷く。
「ふぅん? 前見た時は随分な別れ方してたから、心配してたんだけど。――あれか? 川原で殴り合いでもしたか?」
ニヤリと笑いながら冗談交じりに訊ねてくるルークに、レンはファルと顔を見合わせて、ぷっと吹き出した。
殴り合いはしていないが、似たようなものかもしれない。
「――ルーク」
その時、後ろから聞こえた声に、三人は一斉に振り返った。
「ああ、ニクス。いいのあった?」
立ち上がったルークは自身のペアであるニクスの元へ近寄っていく。彼らの後ろ姿を見ながら、ファルがぽつりと言った。
「ついてくるとは思わなかった」
「え、何が?」
レンが目を瞬かせると、ファルはこちらを向いて肩を竦めた。
「ニクスだよ」
「ああ……、たしかに」
今回このアカデミー所有の鉱山へ行くことを提案してきたのはファルだった。彼から話を持ちかけられ、日程を詰めていた時にたまたまルークと出くわしたのだ。それで彼も参加したいと言ってきたので、日を合わせることにしたのだが……。
「はじめはルークだけ、みたいな感じだったもんな」
課題のペアということもあり、一応声はかけると言っていたルークだったが、彼自身はニクスが同行するとは思っていないような雰囲気だった。
「俺、あんまニクスのことよく知らねぇんだよなぁ……」
「ああ、なんというか教室の隅で同じメンバーと固まってるイメージだな」
「言い方……」
レンは苦笑いを返しつつも、ファルの言うことに概ねは同意見だ。普段は交流もないし、ペアのルークとも課題に関して以外ではあまり交流もないらしい。あまり社交的とは言えないタイプのようなので、慣れない相手ばかりの今日のような集まりには来ないだろうと予測していたのだ。
「まあでも、課題に相当力入ってる、ってルークも言ってたし。俺らと一緒で良い魔石が欲しいんじゃねぇか?」
「……そう、なんだろうけど」
何故か釈然としない表情をするファルに、レンは首を傾げる。
「ファル?」
「……いや、なんでも。それよりさっさと魔石を見つけるぞ」
「お、おう!」
くるりとこちらに背を向けて地面を掘りはじめたファルを見倣って、レンも作業に戻る。
それを横目で確認したファルがふと手を止めて、ルークと話し込むニクスの背中を見つめる。
「何か……。――いや。多分、気のせいだな」
ぽつりと零した言葉に、レンは気が付かなかった。
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