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BL小説-未羽化(研究者×蝶の民)-未羽化_一章

三話 幼蝶は嫌々手を組む4

レンがファイルから取り出した紙は三枚。 その全てを重ねて床に置いた。 「三枚も使うのか……?」 ファルが不思議そうにするのも無理はない。一つの魔法には一つの魔法陣。それが一般的な考えだ。 しかし魔法の専門家を両親に持つレンは、それが必ずしも最適…

三話 幼蝶は嫌々手を組む3

互いに何をしているのかも分からないまま、一週間。 制作した魔導具に組み込む魔法陣をそれぞれ持参し、使用許可をとった演習場に集まっていた。 演習場というのは、主に魔法を練習するための場所だ。中で不測の事態が起こっても外部に被害が出ないようにす…

三話 幼蝶は嫌々手を組む2

――それぞれでやって、後で合わせればいいだろ。 協力する気など毛頭なさそうなファルの提案を、レンも「いがみ合いながらやるよりはマシか」と承諾した。 本番である成果発表会は約一ヶ月後。とりあえず一週間後にそれぞれの途中経過を見せるということで、…

三話 幼蝶は嫌々手を組む1

「――春の課題制作は、ペアでの魔導具制作とします」 もやもやを抱えたまま次の日を迎えたレンは、明くる日の朝一番の授業で、教師のそんな言葉に目を瞬かせた。 アカデミーでは春と秋に一回ずつ、外部の人間を招いての成果発表会がある。 上級課程まで進んだ…

二話 幼蝶は人が嫌い3

結局、ファルと話すこともなく夕食を終え、レンは自室に戻った。 やっぱり謝るべきか。 もやもやぐるぐると考え続け、あの後の授業も殆ど記憶に残っていない有様だ。 部屋に戻ってみれば、まだ風呂から戻っていないのか、まだそこにファルの姿はない。レンは…

二話 幼蝶は人が嫌い2

学園生活がはじまり、はじめは緊張していたレンだったが、クラスメイト達ともあっという間に打ち解けていた。 だが、アカデミーに到着した初日に、気まずい初対面となった同室者ファルだけは別だ。 というより、そもそも彼はレンだけではなく、誰とも必要最…

二話 幼蝶は人が嫌い1

レンの父母は魔法学者だった。 空気中に漂う「魔素(まそ)」と呼ばれるものを力に変える技術、それが魔法だ。 蝶の民が数多く暮らすその国は、非常に魔素が濃い土地として有名で、レンが三歳になるのを契機に移り住んだのだ。レンを一所で育てるため、それで…

一話 幼蝶と出会うまで1

「あれ、レンくん。たった数ヶ月なのに、随分大きくなったね」 突然話しかけてきた見知らぬ若い男に当時五歳になったばかりだったレンは、目を瞬かせた。隣を歩いていた母のスカートをきゅっと掴む。 「あらこの子ったら……。ほら、わからない? おにいちゃん…